業務フロー図ライブラリ Q Business Process Management

出典: Q-BPM

EAとは、ザックマンフレームワークを基にして様々な研究者によって開発された、組織全体を記述・整理し、業務やシステムを改善する仕組みの総称である。

目次

EAの概要

EA(Enterprise Architecture)とは、企業や政府機関・自治体などの組織を包括的かつ体系的に記述することによって、組織のあらゆる構成要素を階層化して整理し、経営の効率化を図る方法、またはそのような組織構造を実現するための基本理念である。構成要素には、組織の目標や業務プロセスモデル、業務ルール、情報システム、人的資源なども含まれる。全体最適の観点から業務やシステムを改善する仕組みであり、業務プロセスや情報システムの構造、利用する技術などを組織全体として整理し体系化することによって、複雑化した組織を包括的に見直し、組織全体の総合的な効率化を図ることが期待できる。また、現状(As Is)とあるべき姿(To Be)を定義することで、これらの差から組織を目指すべき形に近づけていくためのプランニングにつなげることができる。

ザックマンフレームワークとの関係

EAの基礎となっているのは、ザックマンフレームワークであるといわれている。ザックマンフレームワークには具体的な作業手順や成果物の定義、作業に役立つ成果物の部品などが全く用意されていない。そのため、複数の研究者等によってザックマンフレームワークを基本とした様々なフレームワークが開発されており、これらの総称がEAである。

EAの視野の拡大

ザックマンフレームワークが情報システムから企業活動全体へと、扱う対象を拡大したのと同様に、EAの扱う範囲も段階的に拡大している。

第一段階では、EAは個別の情報システムに採用される情報技術のアーキテクチャであり、ITコストの削減などのため検討されていた。そこから視野が拡大され、個々のシステムに対する計画から、システム同士の連携を含む企業システム全体に対する計画へと対象を広げられた。そして、第二段階として企業全体を包括する情報システムアーキテクチャになり、バリューマネジメントの観点が加わった。その後、システムや技術の視点だけではなく、ビジネスの視点を含めて計画を策定する部分に拡大され、第三段階として、ビジネスとITの整合性に注目し、全体最適を図るものとされた。これが現在EAと言われているものだと考えられている。システムの構想から開発終了までだけではなく、システムの運用、保守、次世代システムへの移行など、システムが誕生してから消滅するまでのライフサイクル全体を視野とする考え方もある。


EAの役割

EAの役割は、まず業務とシステム間の関係と現状を明確化することである。組織の業務やシステム全体を統一的な手法に基づいて分析し、全体像を把握できるようにする。これに基づいて複雑化した組織を包括的に見直すことで、各組織にある様々な情報資産の効用を最大化することや、重複しているコスト削減、組織全体を対象に総合的な効率化を図ることが期待できる。

次に、現状(As Is)からあるべき姿(To Be)に至る活動を明確化し、改善サイクルを確立することが挙げられる。EAの策定とは、現状を把握し、あるべき姿を定義することを意味する。EAを策定し、継続的に見直していくためには、データモデルやセキュリティ要件などの標準、IT投資やアーキテクチャ・デザインの原理原則、EAを維持・活用するための仕組み、そして基盤構築やIT投資の優先度に関する計画なども必要となる。これらに基づき、あるべき姿に近づけていくための長期的な設計思想と技術の世代管理に関する指針を示すこともEAの重要な役割である。


EAの全体構造

図1. EAの全体構造
図1. EAの全体構造

EAにはいくつかのフレームワークが提案されているが、いずれも以下に示す要素で概略の構造を捉えることができる。

ドライバ(変化要因)
EAの策定や改良を促す環境の変化要因。
ミッション(使命)とプリンシプル(基本方針)
アーキテクチャ設計を方向付ける。
パフォーマンス評価(PE)
他の4つのアーキテクチャとそれに基づくシステムのパフォーマンスを評価する指標の体系。パフォーマンスとは、システムの動作速度などに限定された意味ではなく、コスト・効率・信頼性などのシステムに関する多様な価値や、ビジネスへの貢献、顧客への利益なども含む。
予算計画・開発・評価
アーキテクチャを利用する過程の進め方。
現状確認・目標設定・移行計画
アーキテクチャを策定する過程の進め方。
標準化・再利用
アーキテクチャに遵守したシステム開発を実施するための行動基準。
参照モデル(RM)
アーキテクチャを設計するための参照する用語の体系。標準的な業務とシステムの採用を進め全体最適に向けた柔軟性の高いアーキテクチャを実現するためには、参照モデルが必要であり、これによってアーキテクチャの品質と了解性を向上させる。
参照モデルには、業績評価参照モデル(PRM)・ビジネス参照モデル(BRM)・サービス参照モデル(SRM)・データ参照モデル(DRM)・技術参照モデル(TRM)の5つの種類があり、さらにそれぞれが大分類、中分類、小分類、個別の仕様という階層を持っている。

EAの構成

典型的なEAは、次の4つの体系から構成されている。

ビジネス・アーキテクチャ(BA)
組織全体の構造や役割などを定義し、業務プロセスや情報をモデル化したもの。現在と将来のビジネス内容を反映した設計図である。これがIT投資を決断する際のガイドとなる。
データ・アーキテクチャ(DA)
業務に必要なデータの構造。データの再利用性やセキュリティ,品質といった,多様な意味を記述する。それぞれのデータがどこで発生し,どう処理され,いつ消去されるのか,といったことも明らかにする。
アプリケーション・アーキテクチャ(AA)
業務プロセスを支援するシステムの機能と,その実現能力を定義したもの。ビジネスの機能を実現するソフトウェアの構造を記述し、システムの役割と機能を業務の視点からまとめたものである。
テクノロジー・アーキテクチャ(TA)
ソフトウェア、ハードウェア、ネットワークなどの技術を用いて、システムの基盤部分を実現する構造。情報システムを将来にわたって安定的に構築・運用・拡張するために必要なIT基盤を定義したものである。具体的には,求められる性能やセキュリティ要件,標準化動向,技術の将来性などから,組織全体の技術標準を設定する。これが,新たに採用する技術や製品が全体最適に合致しているかどうかの評価基準になる。新しいニーズに適応するために新技術を標準に追加するなど,EAの内容を変更するきっかけにもなる。


BPMとの関係

BPMとは、企業戦略を効果的に実現するために全体最適指向で継続的にビジネスプロセスを改善することであり、EAはBPMを効果的に実現するためのツールとして位置づけられる。BPMで行われていることは、EAの中でもビジネスアーキテクチャ(BA)に相当する部分を中心した実践であると考えられる。ビジネスアーキテクチャにはビジネスプロセス以外のビジネスに関わる要素が含まれる場合もあるが、その中核的な要素はビジネスプロセスの最適化である。BPMはビジネスプロセスの実装を伴うので、一部アプリケーションアーキテクチャ(AA)にも関与するが、こちらはやや限定的である。そのため、BPM への取り組みは、BAを中心としたEAを実践するための一つのアプローチだと考えることができる。


EA導入の動き

図2. EAのフレームワーク
図2. EAのフレームワーク

アメリカ

米国政府では、1994年に国防省がTAFIM(Technical Architecture Framework for Information Management)を導入した。TAFIMとはIEEE1003.0のオープンシステム標準に準拠するアーキテクチャフレームワークに基づき、アーキテクチャ開発の方法論も含むように大幅拡張したものである。2000年1月に廃止されたのちには、後継するものとしてThe C4ISR Architecture Frameworkが採用され、2003年に名称がDODAFに変更された。DODAFはアーキテクチャの記述が極めて具体的かつ実践的であり、フレームワーク全体のボリュームが非常に大きい。また、システムのアーキテクチャを記述する成果物やその記述法についても詳細に規定されている。

1999年に米国連邦政府は省庁間のリソース共有や情報共有、IT投資のコストダウンを目的とした、米国政府機関向けのEAのフレームワークFEAFを制定した。FEAFでは、EAをBA・DA・AA・TAの4つの体系に分割して定義されている。FEAFは業務、システムともに大まかな枠組みだけを規定するにとどまっており、ザックマンフレームワークほどではないが、システム開発の際の具体的な作業や成果物に対する記述や指示は少ない。そこで、FEAFは以下に示すような参照モデルを別途用意しており、それらによって具体的な情報を提供して作業の簡略化を図ろうとしている。

  • 政策・業務参照モデル(BRM)
  • 業績測定参照モデル(PRM)
  • データ参照モデル(DRM)
  • サービスコンポーネント参照モデル(SRM)
  • 技術参照モデル(TRM)

これらのモデルのうち、「E-Gov Enterprise Architecture Guidance(共通リファレンス・モデル)DraftVersion2.0」と「政策・業務参照モデル(BRM)」が2003年2月に政府事業の手引きとして公開されており、全政府機関がこれを手本にその実施に取り組んでいる。日本政府が導入しているEAのフレームワークも、FEAFをベースとしている。

また、1995年には民間標準化団体The Open GroupによってTOGAF(The Open Group Architecture Framework)が作成された。これはオープンソースのビジネス向けフレームワークであり、民間企業を中心に開発され、今日企業で最も普及しているフレームワークである。企業では2002年のSOX法制定により、EAの導入が進められている。

日本

日本政府は、業務・システムの改革を進めるために、経済産業省が2003年にEA策定ガイドラインを策定した。米国のFEAFをベースとし、4階層モデルや参照モデル等も採用している。さらにFEAFでは概要しか規定されていないような部分も詳細に記述した部分や、日本独自に拡張した部分もある。電子政府関連予算の効率的かつ効果的な活用や、顧客志向への転換による高度な行政サービスの実現などをEA導入の目的としている。電子政府構築計画では実際にこのEA策定ガイドラインが使用されている。

また企業でも米国と同様に2006年に施行されたJ-SOX法、新会社法等の制定により内部統制を義務化された。現在、自社版EAの策定、全社展開、基幹系システムの再構築などのEA活動が行われている。

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