内部統制報告制度とは、 外部公開する企業情報が信頼に足るものか、を経営者自身に問う制度(日本)である。金融商品取引法を根拠とし、投資家に対する企業情報の適正開示に主眼が置かれる。米国、英国、フランス、韓国等にある同様の制度に習い、2008年より導入された。
目次 |
内部統制報告制度の概要
内部統制報告制度では、上場会社(上場企業)に対し、「財務報告に係る内部統制」に関して、経営者による評価と公認会計士等による評価結果の監査を義務付けている。法的根拠は、2006年6月に成立した金融商品取引法である。なお「2008年4月1日以降開始する事業年度」において提出義務がある。
- 「財務報告に係る内部統制」についての経営者による評価(内部統制報告書の作成)
- 「財務報告に係る内部統制の経営者による評価」についての公認会計士等による監査(内部統制監査)
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金融商品取引法(平成20年6月13日改正) 第二十四条の四の四の1(妙) 有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、第二十四条第一項第一号に掲げる有価証券の発行者である会社その他の政令で定めるものは、事業年度ごとに、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制について、内閣府令で定めるところにより評価した報告書(以下「内部統制報告書」という。)を有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出しなければならない。 |
内部統制の目的
内部統制は企業内の全ての者によって「4つの目的」を達成するために遂行されるプロセスである。
- 業務の有効性及び効率性
- 財務報告の信頼性
- 事業活動に関わる法令等の遵守
- 資産の保全
プロセスの構成要素
内部統制プロセスは「6つの基本要素」から構成される。
- 統制環境
- リスクの評価と対応
- 統制活動
- 情報と伝達
- モニタリング
- ITへの対応
内部統制報告書
上場企業の経営者は、
- 全社的な内部統制の評価項目
- 業務プロセスに係る内部統制の評価範囲
- 監査人との協議
- 重要な欠陥の判断指針
- 評価手続等の記録及び保存
を行い報告書にまとめる。 すなわち、「評価範囲」を定め、「業務プロセスの分析」を行うなどして、虚偽記載の発生リスクが低減出来ているか、等についての記載を行う。期末日に「重要な欠陥」等が存在する場合には、 その内容と是正されてない理由を記載しなければならない。全社の全業務プロセスを網羅的に評価する必要はない。
内部統制監査
先例となる米国制度の運用状況が検証され、主に監査業務の過負荷を回避する配慮がなされている。中でも、ダイレクトレポーティング方式の採用(経営者の評価活動とは別に、監査人自身も企業リスクを独自に抽出する手法)については、各国制度に違いが見られる。米国は採用しているものの、日本においてはアサーション・ベースド・レポーティング(経営者の評価活動が適正に実施されている事を監査する手法)のみが採用されている。なお、内部統制監査は財務諸表監査の実施者(公認会計士)と同一人によって行われる。
- トップダウン型のリスク・アプローチの活用
- 内部統制の不備の区分
- ダイレクトレポーティングの不採用
- 内部統制監査と財務諸表監査の一体的実施
- 内部統制監査報告書と財務諸表監査報告書の一体的作成
- 監査人と監査役・内部監査人との連携
金融庁の公開資料
「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」
- 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(22p)
- 内部監査の基本的枠組み
- 財務報告に係る内部統制の評価及び報告
- 財務報告に係る内部統制の監査
- 財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(91p)
- 内部監査の基本的枠組み
- 財務報告に係る内部統制の評価及び報告
- 財務報告に係る内部統制の監査
基準においては、用語の定義、内部統制報告書記載項目の定義等が記載されている。また実施基準においては、「内部統制報告制度の導入に向けた準備を進める企業等の参考」に資するための、内部統制構築プロセスが例示されている。3点セット(業務の流れ図、業務記述書、リスクと統制の対応)についても、この中で例示されている。
法令上の根拠
内部統制報告制度の理念は、会社法の第362条(第416条)ならびに金融商品取引法の第24条に記載され、また提出すべき「内部統制報告書」の内容については、「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令(平成19年8月10日内閣府令第62号、平成20年6月6日改定)」(縦書きPDF版)にて定められているが、具体的な実施手引の様なものではない。
金融商品取引法(平成20年6月13日改正) 第二十四条の四の四 第一項(妙)
有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、第二十四条第一項第一号に掲げる有価証券の発行者である会社その他の政令で定めるものは、事業年度ごとに、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制について、内閣府令で定めるところにより評価した報告書(以下「内部統制報告書」という。)を有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出しなければならない。
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財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令
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第四条(内部統制報告書の記載事項) 内部統制報告書提出会社は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める様式により内部統制報告書三通を作成し、法第二十四条第一項 の規定による有価証券報告書と併せて財務局長又は福岡財務支局長(第十条において「財務局長等」という。)に提出しなければならない。
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第一号様式
- 【財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項】
- 代表者及び最高財務責任者が、財務報告に係る内部統制の整備及び運用の責任を有している旨
- 財務報告に係る内部統制を整備及び運用する際に準拠した基準の名称
- 財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性がある旨
- 【評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項】
- 財務報告に係る内部統制の評価が行われた基準日
- 財務報告に係る内部統制の評価に当たり、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠した旨
- 財務報告に係る内部統制の評価手続の概要
- 財務報告に係る内部統制の評価の範囲
- 財務報告に係る内部統制の評価範囲及び当該評価範囲を決定した手順、方法等を簡潔に記載すること。なお、やむを得ない事情により、財務報告に係る内部統制の一部の範囲について十分な評価手続が実施できなかった場合には、その範囲及びその理由を記載すること。
- 【評価結果に関する事項】
- 財務報告に係る内部統制の評価結果は、次に掲げる区分に応じ記載するものとする。
- 財務報告に係る内部統制は有効である旨
- 評価手続の一部が実施できなかったが、財務報告に係る内部統制は有効である旨並びに実施できなかった評価手続及びその理由
- 重要な欠陥があり、財務報告に係る内部統制は有効でない旨並びにその重要な欠陥の内容及びそれが事業年度の末日までに是正されなかった理由
- 重要な評価手続が実施できなかったため、財務報告に係る内部統制の評価結果を表明できない旨並びに実施できなかった評価手続及びその理由
- 財務報告に係る内部統制の評価結果は、次に掲げる区分に応じ記載するものとする。
- 【付記事項】
- 財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす後発事象
- 事業年度の末日後に重要な欠陥を是正するために実施された措置がある場合には、その内容
- 【特記事項】
- 財務報告に係る内部統制の評価について特記すべき事項がある場合には、その旨及び内容を記載すること。
内部統制報告制度の沿革
- 2001年12月: エンロン事件(会社破綻)
- 2004年03月: 2004年3月決算より会社代表者による「有価証券報告書の記載内容の適正性に関する確認書」(任意制度)が開始
- 2005年01月: 企業会計審議会(金融庁)の総会にて経営者評価基準・公認会計士検証基準の審議開始決定
- 2005年07月: 企業会計審議会内部統制部会、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方について」の草案を公開
- 2005年11月: 東京証券取引所、システム障害(午前中取引の全面停止)
- 2005年12月: 企業会計審議会内部統制部会、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準案」を公開
- 2006年01月: ライブドア事件(役員逮捕)
- 2006年06月: 金融商品取引法が成立
- 2006年11月: 企業会計審議会内部統制部会、実施基準案の草案を公開
- 2007年02月: 企業会計審議会、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」を公表
- 2007年03月: 企業会計審議会、「四半期レビュー基準の設定に関する意見書」を公表
- 2007年10月: 総務企画局(金融庁)、「内部統制報告制度に関するQ&A」を発行(Q1~Q20)
- 2008年06月: 総務企画局(金融庁)、「内部統制報告制度に関するQ&A」に追記(Q20~Q67)
- 2009年03月: 「2008年4月1日以降開始する事業年度」の決算が集中
BPMとの関係
経営者が自身の企業内部を統制するためには、
- 業務プロセスが定義されて、明らかになっており、
- 業務プロセスに従って、業務が流れるようにコントロールを行い、
- 業務の結果をモニタリングする
ことができるようになっていなければならない。
これらの活動はBPMそのものであり、本報告制度のもとで経営者が自社の内部統制の実施状況について報告書を作成するといった義務を果たすためには、不可欠な活動であると言える。
本制度のもと、上場企業及び上場準備企業は、BPMという考え方を導入し、BPMをITにより実現するためにBPMシステムを導入して、内部統制体制を構築することが求められる。
関連記事
参考文献
- 企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」(金融庁、2007年2月)(PDF:935KB.129p)
- 企業会計審議会「四半期レビュー基準の設定に関する意見書」(金融庁、2007年3月)(PDF:283KB.16p)
- 「内部統制報告制度に関するQ&A(平成20年6月24日)」(金融庁、2008年6月)(PDF:297K.57p)
- 金融庁の組織
- 内部統制報告書第一号様式(内国会社用)




