業務フロー図ライブラリ Q Business Process Management

出典: Q-BPM

ナッシュ均衡 (Nash equilibrium) とは、主体が他者との協力なしに自らの利益を最大化しようと行動した時の状態で、実際には自らも他者も利益を最大化していない状態になることもある。

目次

概要

ナッシュ均衡は、ある主体が他の主体と協調することなく独立して自らの利益を最大しようとして行動する状態のことである。

ナッシュ均衡について重要な点は以下の2点である。詳細は次節で後述する。


  • ナッシュ均衡下では、各人・組織は他の人・組織の行動を意識しながら自らの利益を最大化する行動を選択しているので、自分だけが行動を変えても現状より得をするということはない。したがって、どの人・組織も行動を変更する誘因を持たない。
  • ナッシュ均衡は、各主体が自らの利益を最大にしようと行動した結果であるが、両方の利益が最大化されていない状況になることもある。また、ナッシュ均衡が達成される各主体の行動の組み合わせは、複数存在する場合もある。


ナッシュという名は、提唱者であるアメリカの数学者 John Forbes Nash, Jr. に由来する。

ナッシュ均衡と最適状態

ナッシュ均衡は、各主体が相手の出方を念頭に入れつつ自らの利益を最大化するように行動した状況であるので、一見最も好ましい状況であるように思える。しかし実際は、より多くの利益を両主体にもたらす行動の組み合わせが存在する状況であったり、一方の主体にとっては利益が最大化できていない状況であったりする。以下の例が典型である。

囚人のジレンマ

共同で犯罪を行って捕まった2人の囚人が警官に取り調べを受けており以下の条件が警官から囚人に提示された場合、各囚人のとる行動を考察する。

条件
  1. 2人とも黙秘⇒二人とも懲役1年
  2. 1人が黙秘、もう1人が自白⇒黙秘した方は懲役2年、自白した方は懲役なし
  3. 二人とも自白⇒二人とも懲役2年

2人の囚人のとりうる行動のすべての組み合わせをまとめると、以下の表になる。表内の (〇年、△年) は〇が囚人Aの懲役、△が囚人Bの懲役を表す。

囚人B 黙秘 囚人B 自白
囚人A 黙秘 (1年、1年) (2年、0年)
囚人A 自白 (0年、2年) (2年、2年)

囚人Aは、黙秘と自白をくらべた場合、囚人B の行動に関係なく自白を選択したほうが懲役が少なく、これは囚人Bについても同様である。 したがって、両者「自白」という行動をとることになる。

この行動の組み合わせはナッシュ均衡ではあるが、実際は両者黙秘した方が両者の懲役は短いので、「最適」とは言えない。

男女争い

男女が2人で出掛けることには同意しているが男はボクシング、女はミュージカルに行くことを主張している。2人は一致した行動をとることに同意おり、協調の方法を選択していることになる。

ボクシング、ミュージカルを選択した際の二人の満足度は以下のように設定する。表内の (〇、△) は〇が男の満足度、△が女性の満足度を表す。ただし、同じ行動をとることに前提にしているので別々の行動をとった時の満足度は(0、0) 。

女性 ボクシング 女性 ミュージカル
男性 ボクシング (2、1) (0、0)
男性 ミュージカル (0、0) (1、2)

この場合、両者がボクシングにいく、もしくは両方がミュージカルにいくことがナッシュ均衡であり、ナッシュ均衡になる選択は複数存在する。

以上の、二つの例に共通している点は、両者は自らの利益を拡大する選択が存在するにも関わらず、単独ではそれを選択する動機が働かないということである。

ビジネスプロセス最適活動における均衡

ビジネスプロセスを改善しようとした場合、最適化された状態で落ち着くこともあれば、上で説明したように個々の主体が最適を追求した結果、最適でない状況で落ち着くこともある。つまりビジネスプロセスを実行する個々の担当者や部門が自らの担当箇所においては最適化を計った結果、ビジネスプロセスの部分部分では最適化されているがプロセス全体は最適化されていない状況である。

このような状況を回避するために、BPMが必要になる。BPMの目的はビジネスプロセス全体の最適化である。

BPM推進時に陥りやすいナッシュ均衡

BPMが部門ごとに実施される場合を考える。 部門横断的なビジネスプロセスが管理される場合、ビジネスプロセスに関連する各部門においては、担当箇所のフローは最適化されるが、ビジネスプロセス全体が最適化されているは分からない。部門間で連携が行われず、結果的にビジネスプロセス全体では全く好ましくないといった事態は容易に連想できる。

このような状況はまさにナッシュ均衡の「囚人のジレンマ」状態である。各部門内ではビジネスプロセスは最適化されているので、全体最適への動機は発生しない。

BPM推進時のナッシュ均衡を回避する方法

BPMを推進する際に最適でない状況のナッシュ均衡に落ち込む危険性を回避するのは、全体最適という観点からの部門間の連携などビジネスプロセスを全体で管理するための協調である。つまり、BPMは全社的に協調しながら推進されなければ確実に効果を発揮できる保証はないということである。協調がなされない場合、容易に非最適を温存し、それを改善しようという動機が働かないという状況に陥る危険性がある。

ナッシュ均衡でない最適状態(「囚人のジレンマ」では両者黙秘)は安定状態ではないので、ナッシュ均衡に落ち込まないよう常にモニタリングを行い、継続的に管理する必要がある。

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